日々の臨床現場に立っていると、「もっと記録を伸ばしたい」「上のレベルで通用する身体を作りたい」と、目を輝かせて来院される学生さんやアスリートの方々にたくさん出会います。
先日も、大学でのプレーを見据えて一生懸命に身体作りをしている、非常に志の高い学生さんがいらっしゃいました。
しかし、彼がネットで調べたり、周囲から勧められて実践している「最新の科学的トレーニング」の内容を聞いた時、私は一人の施術家として、率直に「まだ頭をコリ固めない方が良い」と感じてしまいました。
■ 筋肉の「鎧」が、本来の動きを奪っていく
真面目で熱心な選手ほど、教科書通りの指導を信じ、少しでも筋肉を大きくしようと限界まで追い込みます。
もちろん、筋力は大切です。しかし、身体の動きにエラー(神経や関節の引っ掛かり)がある状態のまま、いくら筋肉という「鎧」を分厚くしても、パフォーマンスは上がりません。むしろ、関節の連動性が失われて動きが重くなり、結果的にケガのリスクを高めてしまうのを、私はこの20年間の臨床で何度も目の当たりにしてきました。
特に、これからまだまだ伸びしろのある貴重な時期に、間違ったアプローチで身体を「コリ固まらせてしまう」のは、本当に避けてほしいと心から願っています。
そのため、アドバイスで走らない方が良いといわれても、実際に自分で走って身体がどう変化するのか自分で感じて軽くなったのか重くなったのか知る必要があることを説明しました。
■ 私の言葉すらも、まずは疑ってみてほしい
私はその学生さんに、あえてこうお話ししました。
「世の中で良いと言われている筋トレでも、まずは一度疑ってみてほしい。もちろん、今私が言っていることも含めてね。頭で理解するのではなく、自分の身体で『本当にそうなのか』を感じ取ることが一番大切だよ」と。
身体づくりにおいて最優先すべきは、見栄えの良い筋肉をつけることではありません。「身体を軽くし、一番無理のない良い動き(自然体)ができる状態を作ること」です。
物理的な連鎖に基づいて「良い動き」を追求していけば、結果として、その人の骨格にとって最も適正で美しいスタイル(筋肉のつき方)に、自然と落ち着いていきます。これが、当院が目指す「ナチュラルな身体」です。
逆にいえば、不自然な運動を続けていけば、身体にはいつのまにか不自然なラインや体型ができてしまうのが、いわば「アンナチュラルな身体」です。
■ あなたの身体の「答え」は、あなたの中にある
骨格も、神経の伝達も、これまでのケガの歴史も、一人ひとり全く異なります。「何がナチュラルか」は、誰一人として同じではありません。
だからこそ、ネットに溢れる万人に向けたマニュアルではなく、自分自身の身体の声(サイン)に耳を傾けてみてください。
「一生懸命トレーニングしているのに、なぜか動きがしっくりこない」「いつも同じ場所をケガしてしまう」。もしそんな違和感を抱えているなら、一度立ち止まって、身体の「構造」から動きを見直すタイミングかもしれません。
皆さんが本来持っている「自然体」のポテンシャルを引き出すお手伝いができれば、施術家としてこれ以上の喜びはありません。
