「何もしていないのに肘が伸びない」という恐怖
先日、当院に駆け込んでこられた患者様のケースです。 「荷物を持ち上げた際、急に肘が伸びなくなり、無理に伸ばそうとすると激痛が走る」と、大変驚かれたご様子でした。お仕事柄、日常的に小さなお子様を抱えることが多く、腕が使えないことは死活問題です。
このような「急に関節が伸びなくなった」という患者様を前にした時、臨床家がまず最初に行うべきことは何でしょうか? レントゲンを撮って骨の異常を探すことでしょうか?
いいえ、違います。 絶対に欠かしてはならないのは、【肘の周囲に「炎症の所見」が本当にあるのかどうか】を、この手と目で確かめることです。
炎症の所見とは、明らかな「腫れ」「熱感」「圧痛(押した時の痛み)」、そして「内出血」などのことです。 受傷機転(怪我をした時の状況)を詳しく問診し、患部を視診・触診してこれらの所見が見当たらない場合、問題の震源地は「肘」にはありません。
肘の関節そのものが壊れたのではなく、何らかの別の問題によって「結果的に肘が伸ばせなくなっている(ロックさせられている)」と考えるのが、正しい臨床のプロセスです。
腱鞘炎やこわばりの黒幕は「神経の突っ張り」
結論から言うと、この患者様の肘が伸びなくなった本当の原因は、関節の故障ではなく「神経の突っ張り(過伸張)」でした。
脊髄から出た末梢神経は、首から肩、腕を通って、指の先まで一本のケーブルのように繋がっています。この神経の走行(ルート)を深く理解していれば、指先が伸びなくなる「こわばり」も、手首が痛む「腱鞘炎」も、実は肘のロックと同じ原因が隠れていることがわかります。
もちろん、手先の使いすぎによって結果的に痛みが出ているため、「腱鞘炎ですね」と診断して湿布や電気治療を行う対症療法も、わからなくはありません。 しかし、「そこに本当に炎症の所見(根拠)があるのか?」という極めて基本的な確認を怠れば、治療の方向性は完全に狂います。
これを見極めることができるのは、画像診断(レントゲンやMRI)ではなく、徹底した【問診・視診・触診】という、治療家の基本中の基本の作業だけなのです。
小・中学生の「野球肘」に潜む罠
この「関節か?神経か?」という見極めは、日常の不調だけでなく、スポーツの現場でも非常に重要になります。
例えば、よくある「野球肘」。 関節の周囲の骨や靭帯を本当に痛めて(壊して)しまうには、相当な期間にわたって、何度も何度も無理な負荷をかけ続ける必要があります。
年齢的な身体の成熟度で考えれば、小学生で本物の野球肘(関節の破壊)に行き着く可能性はほぼゼロに近いです。中学生で少し可能性が出てきて、高校生になれば大いにあり得る、といった具合です。
ですから、もし中学生の球児が「ボールを投げすぎたせいか、肘が伸びない」と来院した場合、それが「本当に関節が壊れてロックしている」のか、それとも「単なる神経の緊張(防御反応)」なのかを、鋭く見極めなければなりません。
これを正確に見極められる施術者や医療機関が、果たしてどれだけいるでしょうか。
なぜ、神経が緊張すると関節が伸びなくなるのか?
ではなぜ、神経に問題が起きると、肘や指が真っ直ぐに伸びなくなってしまうのでしょうか。
筋肉が神経を守るために硬くなる「筋緊張」という生理反射もありますが、もう一つ、物理的な理由があります。 それは、神経というものは、首から指の末端まで「何にも摩擦されることなく、綺麗なトンネルを通って行き渡る必要がある」ということです。
もし、首が前にズレていたり、「巻き肩」になっていたり、肩の周囲に不自然な筋肉のヨロイがついていたらどうなるでしょうか? 本来スムーズに滑るはずの神経や血管が、そこかしこで圧迫され、摩擦を起こすことは容易に想像がつくはずです。
ピンと張った糸をどこかで強く押さえつければ、その先にある関節(肘や指)は自由に動けなくなります。これが「伸びない」ことの正体です。
巻き肩を治せば、指も肘も自然と伸びる

原因が分かれば、やるべきことは極めてシンプルです。 神経に摩擦や緊張を起こさせている「姿勢(構造)」を改善することです。
例えば、巻き肩を治し、関節を本来の正しい位置(自然体)にリセットしてあげるだけで、圧迫から解放された神経はスムーズに滑り出し、嘘のように指や肘が真っ直ぐに伸びるようになります。
先ほどの「肘が伸びなくなった患者様」も、当院で構造を整える施術を行った直後、まだ少し痛みは残っていたものの、曲がったままだった肘はしっかりと伸びるようになりました。 そして翌日には、残っていた痛みもほぼ消失し、大変驚かれていました。
指が伸びない、肘が痛い。 そんな時、痛みのある部分だけをマッサージしたり、画像診断だけで「使いすぎ」と片付けられてしまうことに違和感を感じたなら。
あなたの腕をロックしている「本当の黒幕(姿勢と神経の摩擦)」を突き止めるために、ぜひ一度、当院の問診と触診を受けにいらしてください。
痛みのある場所には、原因はない。
「巻き肩」や「首のズレ」といった構造的エラーが、手足の神経をロックする。 当院独自の根本改善アプローチの全貌はこちらをご覧ください。
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