「なんだか最近、肘を伸ばすと引っかかるような痛みがある…」
「肩を横に上げようとすると、以前より可動域が狭く、痛みも感じる…」
もしあなたが何かをした後からこのような症状に悩まされているなら、その原因の一つに腕神経叢(わんしんけいそう)の損傷が考えられるかもしれません。
特に、今回はその中でも後神経束(こうしんけいそく)という部位の損傷に焦点を当て、その症状や原因、そして意外にも深く関わっている「姿勢」について詳しく解説していきます。
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腕神経叢の後神経束とは?

腕神経叢とは、首から出て腕や手に向かう神経の束のこと。この神経叢は、いくつかの束に分かれており、その一つが後神経束です。後神経束は、主に以下の2つの重要な神経を形成しています。
- 腋窩神経(えきかしんけい): 肩の筋肉である三角筋や小円筋を支配し、肩を外に上げる動作(外転)や外側に回す動作(外旋)に関わります。
- 橈骨神経(とうこつしんけい): 腕の後ろ側にある上腕三頭筋(肘を伸ばす筋肉)や、前腕の多くの筋肉、そして手の感覚の一部を支配します。
つまり、後神経束が正常に機能しないと、肩や肘の動きに様々な支障が出てくる可能性があるのです。
後神経束はなぜ損傷するのか?
後神経束の損傷の主な原因の一つは、牽引力(引っ張られる力)です。具体的には、以下のような状況で発生しやすいと考えられます。
- 肘に重いものを長時間かけていた: 例えば、リュックサックの紐を肘にかけていたり、重い買い物袋を肘から提げていたりする状態が続くと、腕の神経が引っ張られることがあります。
- 腕を強く引っ張られる: 転倒しそうになった際に誰かに腕を強く掴まれたり、スポーツなどで腕が不自然な方向に引っ張られたりすることがあります。
後神経束損傷で現れる症状
後神経束が損傷すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 肘の伸展時の痛みやひっかかり: 肘を伸ばす際に、神経が引っ張られるような痛みや、何かに引っかかるような感覚が生じることがあります。
- 肩の外旋の可動域低下: 肩を外側に回す動作がスムーズに行えなくなったり、可動域が狭くなったりします。
- 肩を側方に挙げる際の可動域低下や痛み: 腋窩神経の支配する三角筋の機能が低下することで、肩を横に上げる動作が困難になったり、痛みを伴ったりします。
- 痛みがなかなか治らない: 安静にしていても症状が改善しにくい場合があります。
姿勢の歪みが神経を痛めやすくする?
見過ごされがちですが、実は姿勢の歪みが腕神経叢、特に後神経束への負担を増大させ、損傷を引き起こしやすくしたり、症状を悪化させたりする可能性があります。
なぜ姿勢が重要なのか?
私たちの体は、骨格を中心に筋肉や神経が複雑に連携して動いています。姿勢が歪むと、本来であれば均等にかかるはずの力が一部分に集中し、筋肉が過度に緊張したり、神経が圧迫されたり、伸ばされたりすることがあります。
姿勢のカテゴリと症状の関連性
ここでは、後神経束の損傷と関連しやすい姿勢の例をいくつかご紹介します。ご自身の姿勢と照らし合わせてみてください。
- 猫背・巻き肩: 背中が丸まり、肩が内側に入った姿勢は、肩甲骨周りの筋肉を緊張させ、腕神経叢全体を圧迫する可能性があります。特に、肩が前に突き出る姿勢は肩甲骨上部にコリを作りやすく、神経の摩擦を生じるきっかけになります。
- なで肩: 肩が下がりやすい体型の方は、腕の重みが直接的に腕神経叢にかかりやすく、特に下位の神経(後神経束も含む)が伸ばされやすい傾向があります。
- 腰のズレ・骨盤の歪み: 土台である腰や骨盤の歪みは、背骨全体のバランスを崩し、肩や首の位置にも影響を与えます。脊柱全体の歪みによりどちらかの肩が下がりやすければ、そこで神経が伸長され、腕神経叢への負担が増加することがあります。
- 座っている時の重心の偏り: 常に同じ側に重心をかけて座る癖がある場合、体の左右のバランスが崩れ、肩の高さや位置にずれが生じやすくなります。これも腕神経叢への負担につながることがあります。
あなたの姿勢は大丈夫?
ご自身の姿勢が気になる方は、座っている時にどちらかのお尻に体重をかけてみると、座りやすいお尻と座りにくいお尻があり癖がついているはずです。
施術のポイント:肩甲骨と鎖骨の間の筋肉に着目
当院では、後神経束の損傷による肩や肘の痛みの改善には、直接的な神経へのアプローチを行うだけでなく、周囲の筋肉の緊張を和らげることが重要です。肩甲骨と鎖骨の間は特にこれらの痛みに効果があります。
- 僧帽筋: 肩甲骨を安定させ、正しい肩の位置を保つために重要です。
- 後斜角筋: 首の側面にある筋肉で、肩甲骨の動きや腕神経叢の通り道に影響を与えます。
姿勢の歪みによる根本改善と神経の炎症を抑制する対症療法により、早期改善することが出来ます。
まとめ
今回は、腕神経叢の後神経束の損傷による肩と肘の痛みについて、その原因、症状、そして姿勢との深い関連性について解説しました。
もし、あなたが腕を引っ張られたなど、きっかけがあったり、慢性的に後神経束にストレスがかかることでも似たような肩ひじの痛みを伴うことがあります。
そのうち治ると自己判断したり、肩や首周りを揉むことが悪化することもあります。また原因が分かっていないにもかかわらず、無理に施術されることで、より症状が悪化し、難治化する恐れもあります。施術は誰に、どこで診てもらうかで貴重な時間とお金を失わずになり、生活の質にも大きく影響を与えることがあります。