脊髄・末梢神経の働き 足首・ふくらはぎの痛み(捻挫、アキレス腱) 院長の臨床ノート

【アキレス腱断裂】なぜ、NBA選手でも切れるのか?「練習不足」という言葉で見過ごされる、本当の原因。

ニュースの紹介と「本当の問い」(きっかけ)

最近、NBAでトップ選手のアキレス腱断裂が急増している、というニュースが話題になりました。 この問題に対し、レジェンドであるポール・ピアースやケビン・ガーネットは、「現代の選手は練習不足で、基礎的なふくらはぎの強化を怠っている」と警鐘を鳴らしています。

確かに、彼らの言葉には重みがあります。しかし、私たちは、その言葉の裏に隠された、より本質的な問題に光を当てるべきだと考えています。

なぜなら、NBA選手たちの筋力が、私たち一般人より弱いわけがないからです。現代の選手が、昔の選手より「ひ弱」になったわけでもありません。問題は、もっと根深い場所にあるのです。

『なぜ、彼らのアキレス腱は、トレーニングの負荷に耐えられないほど「もろく」、常に「つっぱった」状態になってしまっていたのか?』

当院が示す「核心的な答え」:原因は下半身ではなく「上半身」にあり

「アキレス腱が弱いから、鍛えれば良い」…そう考えるのは、あまりにも短絡的です。 なぜなら、アキレス腱が過剰に緊張する原因は、筋肉が弱いからではなく、「神経による異常な緊張」以外に考えられないからです。

そして、その神経の異常は、腰や足首だけでなく、実は「上半身」に根本的な原因が隠れています。 特に、肩回りが異常に太く、硬くなっているような「不自然な身体」は、広背筋などを介して腰椎への負荷を増大させます。その結果、脊柱全体のしなやかさが失われ、脊髄から足先まで繋がる神経が常に緊張し、アキレス腱をギリギリの状態まで張り詰めさせてしまうのです。

なぜ?根本原因のメカニズム解説

この「筋緊張」は、非常に説明しにくい概念ですが、身体が発している異常なサインの一つです。そして、そのほとんどは、神経の摩耗や伝達異常といった、神経性の問題に起因します。

【負の連鎖】なぜ、アキレス腱は断裂に至るのか

現代のトレーニングは、時に「不自然な筋肉」を作り出します。

【負の連aschen連鎖】

  • 上半身を無理に鍛える
  • 広背筋などに過度な負担がかかり、肩や股関節の可動域が低下
  • 身体の歪みが生じ、脊柱全体のしなやかさが失われ、神経が常に緊張する
  • 神経の緊張によって、アキレス腱やふくらはぎに「筋緊張」と「むくみ」が発生
  • その部位は、脳が正常にコントロールできない「無意識な部位」となる
  • その状態で爆発的な動きをした瞬間、準備のできていない組織が断裂する

これが、トップアスリートでさえもアキレス腱を断裂してしまう、メカニズムの正体です。弱くてもろくなったのではなく、異常なほどに不自然な緊張が、この悲劇を生んでいるのです。

腓腹筋内側肉離れ好発部位

【専門家メモ】アキレス腱と、その周辺組織

  • アキレス腱 (Achilles tendon):
    • ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)と、かかとの骨(踵骨)を繋ぐ、人体で最も強靭な腱。歩く、走る、跳ぶといった全ての動作の根幹を担います。
  • 腓腹筋・ヒラメ筋:
    • アキレス腱を介して、強力なつま先立ちの動きを生み出す、ふくらはぎの主要な筋肉群。
  • アキレス腱の神経:
    • 主に脛骨神経に支配されています。この神経は、腰から始まり、お尻、太ももの裏、ふくらはぎを通り、足の裏まで繋がる、非常に長い神経です。そのため、腰や骨盤の歪みが、アキレス腱の状態に直接影響を与えるのです。

どうすれば?「緊張を解く」ことから始める、当院のアプローチ

当院では、このアキレス腱の過剰な筋緊張に対し、まず「鍛える」のではなく、「解く」ことから始めます。

関節の可動域や、身体の弾力性を改善するために、腰や骨盤だけでなく、本当の原因である「脊柱全体」に対して施術を行います。これにより、神経の異常な緊張を解放し、身体が本来持つ、しなやかな状態を取り戻します。

実際に、当院の施術を受けている方々は、このアプローチによって、長年のアキレス腱の痛みが、驚くほど簡単に解消されることを、ご自身の身体で体感されています。

セルフケアのヒント:まず、自分のアキレス腱と対話する

「ただ鍛える」前に、まずご自身の身体の状態を知ることが、何よりも重要です。 アキレス腱に問題がある場合、その前兆として、アキレス腱そのものが「つっぱって」います。

簡単なチェック方法として、以下の3つのポイントを指でつまんでみてください。

もし、これらの場所をつまんだ時に強い痛みを感じるなら、それは明らかに異常なサインです。これは、ふくらはぎの筋力が弱いからではありません。逆に、ふくらはぎは柔らかくても、アキレス腱だけが異常につっぱっている、という方は非常に多いのです。

まとめ:切れたロープの端を見るのではなく

アキレス腱断裂という問題に対し、「ただ鍛えろ」というのは、切れたロープの端を見て、「もっと丈夫なロープを使え」と言っているのと同じです。パフォーマンスを数値化する現代の「科学的なトレーニング」も、時にこの本質を見過ごしがちです。

私たちが本当に問うべきは、「なぜ、そのロープは常にギリギリまで張り詰め、擦り切れるような環境にあったのか?」ということです。 その視点こそが、再発を防止し、真の健康を手に入れるための、唯一の鍵だと私たちは考えます。

今回は断裂の根本原因について深掘りしましたが、アキレス腱炎のトップページはこちら

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