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四肢の疾患(腕・足)

捻挫の定義:靭帯損傷だけではない、軟部組織の影響

広義と狭義の「捻挫」とは?

「捻挫」という言葉は、日常的に使われるものですが、その定義は広義と狭義の2つの観点で異なります。狭義では、捻挫は主に靭帯損傷を指し、関節の安定性を保つ靭帯が伸びたり、部分的または完全に断裂することを意味します。一方、広義では、関節周辺の軟部組織、すなわち筋肉や腱、関節包、神経なども含まれ、これらの損傷が捻挫として扱われる場合もあります。この広義と狭義の違いを理解することが、正しい診断と治療のために重要です。

足首捻挫施術部位は前脛骨筋腱炎。捻挫動作により前脛骨筋腱炎を痛め施術前と施術後の腫れのひき方を比べた写真
これは以前に施術前と施術後すぐの写真の比較ですが、施術前に赤丸の部分に腫れがあるのが確認できると思います。広義の捻挫では、前脛骨筋腱炎をともなっていた足首の捻挫です。筋腱を損傷した場合には写真のような部位に腫れ圧痛を確認できます

診断名が混乱を引き起こす場合

たとえば、捻挫によって前脛骨筋腱炎が発症した場合、広義の意味で捉えると「捻挫による前脛骨筋腱炎」と診断されます。しかし、狭義の意味で捉えると「靭帯損傷と前脛骨筋腱炎の両方がある」と誤解される可能性があります。このような場合、捻挫の定義が狭義であるか広義であるかが曖昧だと、患者も医療者も混乱しやすくなります。

捻挫をした際に、前脛骨筋腱炎だけを損傷した

  • 狭義=前脛骨筋腱炎(捻挫ではない)
  • 広義=捻挫の中の前脛骨筋腱炎

捻挫という診断名を使わないことが一番の解決策。『捻挫』といわれたらどの軟部組織の損傷があるのか聞きましょう。

軟部組織の診断における問題点

接骨院では、軟部組織の損傷は通常、問診、視診、触診によって十分に診断が可能です。しかし、整形外科ではレントゲンを重視し、骨折がないと判断された場合に「捻挫」と診断されがちです。この際、問診や視診、触診が行われず、軟部組織の損傷の詳細な部位が確認されないことが問題です。その結果、靭帯損傷として扱われ、適切な治療が行われないことがあります。

  • 問診視診触診
    軟部組織の損傷部位を把握
  • レントゲン
    骨の損傷の有無を確認
  • 骨に損傷がなければ、①のどの軟部組織の損傷かにより治療を行う
    また、詳細に画像診断したい場合はMRIをとる

骨以外の靭帯損傷として診断されないように気を付けましょう。

靭帯損傷と筋腱損傷の治療の違い

靭帯損傷と筋腱の損傷は、その治癒プロセスや治療法が大きく異なります。靭帯は比較的安定した構造であり、固定や安静が重要です。一方で、筋腱は柔軟性と動きを維持することが回復にとって重要です。しかし、捻挫(靭帯損傷)として処置されると、筋腱の損傷が見逃されることがあり、治癒が遅れるだけでなく、癒着により足首が固まってしまう可能性もあります。適切な診断がなされなければ、その後の回復に影響を及ぼす可能性があります。

また、複合損傷であることも治癒を遅延する要因になります。実は多くの捻挫は、靭帯だけを痛めていることの方が稀であり、捻挫動作では、靭帯や骨、筋腱などを同時に損傷する複合損傷が圧倒的に多いです。そのためどの組織をどれくらい痛めているか判断し施術を行うも短期改善に重要です。

結論:正確な診断が治癒への第一歩

捻挫という診断名は広義にも狭義にも使われ、軟部組織の損傷を包括することがありますが、それによって誤解が生じることもあります。問診、視診、触診をしっかりと行い、軟部組織の損傷部位を把握し、適切な治療を行うことが大切です。骨折がないからといって「捻挫(靭帯損傷)」とするのではなく、その他の軟部組織の損傷を見極め、適切な処置を施すことが重要です。

  • この記事を書いた人

【柔道整復師】 熊谷 卓眞(kumagai takuma)

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