最近、「筋膜リリース」「筋膜はがし」「筋膜ローラー」という言葉をよく耳にするようになりました。
まるで 「筋膜さえほぐせば体は良くなる」 というイメージが独り歩きしています。
しかし、実は筋膜だけをケアしても根本的な改善は難しいのです。
筋膜はあくまで “膜”という潤滑層 に過ぎず、その機能を支えているのは もっと深い層にある「結合組織」 なのです。
今回は、 筋膜とその下にある結合組織の本当の関係 をわかりやすく解説し、「なぜ筋膜だけをほぐしても不十分なのか?」をご紹介します。
1. 筋膜とは「膜」であり、単独では存在できない
まず大前提として、筋膜とは「fascia=膜」です。
- 筋肉・内臓・神経・血管など、あらゆる組織を 包む・仕切る 膜状の組織です。
- しかしこの膜は ただのシート状の膜 ではなく、
膠原線維(コラーゲン)や弾性線維 を含む「結合組織」の一部です。
つまり、 筋膜単独では存在できない。
それを 内側から支える基質=結合組織 があってこそ、筋膜は働いているのです。
2. 筋膜を支える「結合組織」の役割|膜を生かす基盤
✅ 結合組織が筋膜を支える理由
- 筋膜そのものは 薄くてデリケート な膜。
- そこに 水分・栄養・酸素 を届け、老廃物を排出 しているのが 結合組織。
→ つまり 筋膜だけをケアしても、下の結合組織が硬くむくんでいたら意味がない のです。
✅ 結合組織があるから筋膜が動く
- 結合組織が ヒアルロン酸や水分 を供給することで筋膜が潤滑に動ける。
- 逆に、結合組織が乾いて硬くなると、筋膜も 硬く、動かない膜 になってしまいます。
さらに、生理学的に考えれば「筋膜をほぐす」という行為自体が矛盾しており、
結合組織の弾力性によって筋膜が自然に動く構造 と理解するのが正しいです。
つまり、
原因が結合組織(深層組織)であり、結果が筋膜の動きなのです。
3. 筋膜・結合組織・深層組織の立体的な関係
実は「筋膜」と呼ばれるものは 単層の膜ではなく、複数の層が重なった立体的な構造 です。
【身体の層構造】

層 | 概要 |
---|---|
表皮・真皮 | 皮膚層(浅い結合組織も含む) |
浅筋膜(表層筋膜) | 皮膚直下の膜。浅い結合組織とつながる |
脂肪組織 | 浅筋膜と深筋膜の間。血管・リンパも通る |
深筋膜(深層筋膜) | 筋肉を包む膜。強靭な結合組織と一体 |
筋外膜・筋周膜・筋内膜 | 筋線維レベルまで存在する膜 |
→ つまり、筋膜だけではなく 結合組織を含む複合的な層構造 があり、
それら全体で初めて「滑らかな動き・柔らかさ」を作っている のです。
4. 筋膜が動かない原因は「結合組織」の問題がほとんど
「筋膜が硬い」「動かない」という悩みの原因は、
筋膜のすぐ下の結合組織の癒着・むくみ・線維化 がほとんどです。
❌よくある誤解
誤解 | 正しい理解 |
---|---|
筋膜だけが硬いから動かない | 実は結合組織が硬くて筋膜が動かない |
筋膜だけをほぐせばOK | 結合組織を含めたケアが必須 |
表面の筋膜だけアプローチすれば十分 | 深部組織(血管・リンパ)も整えないと再発 |
当院が考える筋膜ケアする方法
筋膜ケアで大切なのは、
なぜ筋膜が重要なのか?どうすれば筋膜が分泌され、筋肉組織の働きが向上するのか?
この本質を理解することです。
本当に大切なのは潤滑性ではなく 「弾力性」。
弾力性があることで組織の働きは活性化し、効率も向上します。
だからこそ、外から無理に押す・ほぐすだけの方法には注意が必要であり、専門的な知識と技術が求められます。

筋組織は 外力に弱い構造 です。
例えば、鶏肉を叩いて柔らかくするような外的刺激は、筋肉の構造を壊し、機能を損ないます。
また、外力を加える場合に多いのが神経の損傷です。筋膜をほぐすのであれば、痛みを感じないくらいの弱い刺激でなくてはならないはずです。
✔️ 本来の筋膜リリースとは?
「筋膜リリース」とは 膜だけを引っ張ることではなく、
膜を含む結合組織全体を滑らかに整えること を意味します。
✅ まとめ|筋膜への正しい理解とアプローチ
ポイント | 内容 |
---|---|
筋膜の正体 | 結合組織の一部。膜単独では存在できない |
筋膜の栄養供給 | 結合組織経由で水分・栄養が供給 |
正しいケア | 表層の筋膜だけでなく、深層結合組織を含めた立体的ケア |
再発防止 | 血流・リンパ循環 の改善が必須 |
📝 おわり|筋膜とは
筋膜とは 結合組織と一体となって働く潤滑層 です。
その奥にある 結合組織の弾力や潤い がなければ、筋膜は本来の働きを果たせません。
だからこそ、「筋膜だけをほぐす」のではなく、
結合組織や深層の血流・リンパを含めた総合的なケア が必要なのです。
筋膜ケアの本質とは、「膜」そのものではなく、身体全体の弾力と流れを整えること に他なりません