手首の痛みが筋腱によるものではなく、神経が関連していることがあることをご存知でしょうか?
今回は、運動中に手首の掌側の真ん中に痛みを感じる症例について、その原因を探り、どのように治療が進んだかを紹介します。
症状
この患者様は、運動をしていると手首の掌側、真ん中に痛みを感じ、特に手首を曲げたり反らすと痛みが強くなるとのことです。
この痛みはすでに1か月以上続いており、日常生活にも影響を及ぼしていました。初めは軽い痛みだったものの、動作を繰り返すごとに痛みが強くなり、動作がつらいという状況です。

疑い・鑑別
痛みの原因として最初に疑われるのは、以下のような疾患です:
- 腱鞘炎
- 手根管症候群
しかし、手首の関節に腱鞘炎や損傷の兆候は見られませんでした。さらに、他動的に手首を動かしても痛みが続くことから、神経との関連が強い可能性が考えられました。
神経との関連
次に、神経との関連について検討しました。
手首の痛みを引き起す可能性がある神経の疾患は以下の通りです。
- 胸郭出口症候群
- 斜角筋症候群
- 脊髄の損傷
- 手根管症候群
特に胸郭出口症候群や斜角筋症候群など、上肢に関連する神経への圧迫が疑われました。最も関連が深いと思われるのは、腕神経叢の正中神経であり、T1とのデルマトーム(感覚部位)との関係が深いと考えました。
問診・視診・触診
- 首の反り
- 肩の丸まり
- 肩の力み
- 肩の可動域低下
- 小胸筋圧痛
- 斜角筋圧痛
- C5~T1コリ張り
- 頸椎胸椎の凹凸歪み
これらの所見から、姿勢に問題があることが明らかになり、患者様が日常的に肩や首に張りを感じていることが分かりました。これらの筋肉や神経が手首に関連している可能性が高いと考えました。
施術部位を絞って軽快具合を確認
施術では、胸郭出口症候群などの小胸筋症候群を疑い、小胸筋の緊張をほぐすことに注力しました。また、頸椎の反りを抑えるために、胸椎へのアプローチを行いました。施術後、痛みの軽減が見られ、患者様の手首の動きがスムーズになりました。
施術経過
1か月続いていた痛みが施術後2~3日で軽減し、患者様からも「手首の痛みがほとんど感じなくなった」とのフィードバックをいただきました。施術後の経過が非常に良好で、痛みが早期に緩和されました。
原因の考察
手首の痛みの根本原因として、神経の圧迫が関与していたことは間違いありませんが、神経症状に関しては幾つかの疑問も残ります。

- 小胸筋症候群では、運動神経線維に影響を与え、筋力低下や動きづらさを引き起こすことがありますが、感覚神経への影響は少ないため、冷えやしびれといった感覚障害は少ないと考えられます。
- 姿勢の悪さが引き起こす過剰な頸椎の負担が神経に影響を与え、結果として手首に痛みを引き起こしていた可能性があります。
姿勢による生理的な機能の回復
施術により、肩の位置が改善され、姿勢が改善されるkとおで頸椎への負担が軽減され、身体の歪みが整い神経伝達、循環障害が改善された可能性もあります。
結論
手首の痛みは、小胸筋症候群や肩首の姿勢不良が引き金となり、正中神経に圧迫や牽引が加わることで発生したと考えられます。
運動中に姿勢不良のまま手首を動かすことで、正中神経にストレスがかかり、痛みが発生していた可能性が高いです。
施術により姿勢が改善され、神経への圧迫が軽減された結果、痛みがすぐに改善したことから、姿勢の重要性が改めて確認されました。
さらに、正中神経に問題がでた原因として、ベンチプレスはやってはいけない運動のひとつであることを改めて認識し、周知させていく必要があることを実感。