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【Clinical File】高校生スプリンターのハムストリング肉離れ。なぜ「ケア」をしているのに再発するのか?

当院には、肉離れを繰り返してしまい「癖になっているから治らない」と諦めかけているアスリートが多く来院されます。 しかし、断言します。肉離れに「治らない」はありません。

肉離れは、ある日突然起こる不運な事故ではありません。 過去の捻挫の放置、大きすぎる靴、あるいは顎の歪みによる消化吸収の低下……。 そうした「身体からのSOS(信号)」を無視し続けた結果、許容量を超えた瞬間に筋肉が破綻する、必然の結果です。

問題の本質は、「切れた筋肉」そのものではなく、「なぜそこで切れる動きをしてしまったのか?」というプロセスにあります。

「運動神経」の正体とは何か

「肉離れをしやすい」という状態を、少し厳しい言い方で表現するなら、それは「運動神経が機能していない状態」と言えます。

一般的に「運動神経が良い」というと、生まれつきの才能のように思われがちです。 しかし、我々プロの視点ではこう定義します。 なめらかな動き、バネのあるしなやかな走り。これらは全て「脳からの指令が、脊髄を通って末端の筋肉まで、ノイズなく伝達されている状態」です。

逆に、この神経伝達が阻害されているとどうなるか。 脳は「動け」と命令しているのに、筋肉にはうまく伝わらず、常に緊張状態(筋緊張)が生まれます。 ゴムで言えば、常に引っ張られて硬直している状態です。この状態でダッシュをすれば、当然ゴムは千切れます。これが肉離れのメカニズムです。

つまり、肉離れを治すということは、単に筋肉をくっつけることではなく、この**「神経伝達のエラー」を解除すること**に他なりません。

なぜ、筋緊張は起きるのか

施術の現場において、私は筋肉そのものを強く揉んだり、無理に伸ばしたりすることは一切しません。 狙うのは、筋肉ではありません。「神経」です。

神経が骨や筋肉の隙間で圧迫されている場所(絞扼部位)や、摩耗して滑りが悪くなっているポイントを探し出し、そこを解放(リリース)します。 すると、脳からの指令がスムーズに通るようになり、カチコチだった筋肉に一瞬で「弾力性」が戻ります。

「運動神経が良い人」の身体とは、この弾力性がある状態のこと。 施術によって神経の通りを良くするだけで、あなたの運動神経(パフォーマンス)はその場で向上するのです。

施術例
CASE REPORT

患者データ

高校2年生、陸上部(短距離)。 左ハムストリングの肉離れを繰り返し、全力で走るのが怖い状態。

問診視診触診

患部はハムストリングの上部。 足を前方に振り上げる動作(スプリントの基本動作)で痛みが発生。 ハムストリングの内側に強い筋緊張(外傷性の硬結)を確認。

施術アプローチ

患部からハムストリング内側にかけて、高出力の近赤外線を約15分間照射。 深層で癒着していた筋緊張を緩め、神経の滑走性を回復させました。

しかし、最も重要なのは「なぜ、そこに硬結ができたのか?」という推理です。 【左ハムストリング + 振り上げ動作での痛み + 高校2年生】 このキーワードから導き出される犯人は、十中八九「間違ったストレッチ」です。

詳しく聞くと、やはり部活のペアで行う過度なストレッチや、動画で見よう見まねで覚えた「痛いけど効くストレッチ」を熱心に行っていました。 良かれと思って筋肉を引き伸ばし、自ら「微細な肉離れ」を作り続け、その傷口が硬くなった状態でダッシュをしたことで、決定的な肉離れを引き起こしていたのです。

再発を防ぐ「正しい知識」

いくら施術で神経を整えても、家に帰ってまた「破壊するストレッチ」を行えば、必ず再発します。 特に肉離れの再発は、身体の痛み以上に「また切れるかもしれない」という**イップス(心理的なブレーキ)**を選手に植え付けてしまいます。

だからこそ、当院では「やってはいけないストレッチ」と「本当に効果のあるセルフケア」の指導を徹底します。

大会直前の選手へ

「今週末が、最後の大会なんです…」 この症例の彼もそうでしたが、ギリギリの状態で来院される選手も少なくありません。

本来であれば安静が必要ですが、選手の「想い」がある限り、私たちは諦めません。 リスクを正直にお伝えした上で、近赤外線と神経調整を駆使し、その週末に走れる状態まで持っていくことも可能です。

それは医学的なベストではないかもしれません。しかし、選手の人生におけるベストを尽くすこと。 それもまた、臨床家としての使命だと考えています。

  • この記事を書いた人

【柔道整復師】熊谷卓眞

身体の“本当の秘密”、知りたくありませんか?あなたの「治りたい」に本気で向き合う、「施術者」です。

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