ふと手に取った「カッコいい靴」が、子供の膝を壊していた。オスグッド病と“反り上がったつま先”の関係

「なぜ、治らないのだろうか?」

ある中学生のオスグッド病(膝下の痛み)の患者様を施術したときのことです。 私は、オスグッドの施術には自信を持っていました。 骨が筋肉に牽引されて炎症を起こしている患部への「近赤外線照射」、そして身体の歪みや姿勢の改善。 これらを通常通り行えば、痛みは引き、数週間後には笑顔で卒業していくのが常でした。

今回も、施術直後は「楽になった」と喜んでいただけました。 しかし、数週間経っても「いつもよりは痛くないけれど、まだ痛い」という状態が続くのです。

生活習慣も改善し、安静にしているにも関わらず、なぜ痛みが取れないのか? 私は自分の臨床における「5つの根本原因」を一つずつ洗い直すことにしました。

消去法で残った「最後の容疑者」

私が定義する痛みの根本原因は、以下の5つに細分化されます。

  1. 歪み(構造的問題)
  2. 循環(血流・神経)
  3. 認知(自分の状態を正しく認識できているか)
  4. 過去の怪我(古傷の影響)
  5. 生活習慣(日常の動作・道具)

通常であれば、1と2(歪みと循環)を改善すれば大抵は治癒に至ります。 残る3つを精査しましたが、「認知」や「過去の怪我」は今回のケースには当てはまりません。 では、5の「生活習慣」か? しかし、彼は部活も辞めており、運動による負荷はありません。膝をつくことは多いとのことでしたが、それだけでここまで長引くとは考えにくい。

消去法で最後に残ったもの。 それが、彼が毎日履いている**「靴」**でした。

「反り上がったつま先」の罠

彼が履いていた、一見機能的でカッコいいその靴を手に取った瞬間、全ての謎が解けました。

その靴は、つま先が極端に反り上がっており(トゥスプリング)、ソールが硬く、バネのように走れる構造になっていました。 ランニング用としては優秀かもしれません。しかし、それを「日常」で履くとどうなるか?

つま先が地面につかないため、重心は自然と「後ろ(かかと)」に移動します。 試してみてください。かかと重心で立つと、後ろに倒れないように無意識に膝を曲げ、太ももの前(大腿四頭筋)に力を入れて踏ん張ることになります。

つまり、彼はその靴を履いている限り、24時間ずっと膝に負担をかけ続けていたのです。 これでは、いくら私が施術で緩めても、靴を履いた瞬間に元の木阿弥です。

思考のアップデート

この気づきは、私の臨床哲学をガラッと変える(アップデートする)きっかけになりました。

「いくら身体を整えても、間違えた道具(靴の選び方や身体の使い方)は身体を壊すきっかけになります」

私が院内に「足の測定機」を導入し、サイズ測定を行うようになったのは、これが理由です。 大きな靴や、高機能すぎる靴がどれだけ身体に負担をかけているか。 その靴の問題が、様々な痛みやケガの「根本原因」であることに気づいてしまったからです。

「良い靴」の定義を変えよう

メーカーは売るために「速く走れる」「歩きやすい」といったキャッチーな言葉を使います。 底が丸みを帯びていたり、反発力があったり。 しかし、そのキャッチコピーに惑わされると、大変痛い目を見ます。

子供の足に必要なのは、高いハイテクシューズではありません。 サイズが適切で、ソールが柔らかく、フラットな靴です。 自分の足の感覚をダイレクトに感じ、指を使って地面を掴める靴こそが、最強の道具なのです。

また、「足が崩れているからインソールを入れましょう」という安易な指導も危険です。 崩れている足にインソールを入れて固定してしまえば、足型はより崩れ、骨が突出することさえあります。 自分の足を使いこなすこともできず、「靴やインソールに履かされている」状態では、身体全体が歪んでいくのは当然です。

たかが靴、されど靴

このことに気づくには、レントゲンやMRIを見るだけでは不十分です。 患者さんの背景にある「生活」を、幅広く見る視点が必要です。

たった一つ、その靴の間違いに気づいてあげられないだけで、その子の笑顔は見られなくなってしまうかもしれない。 好きな競技ができなくなってしまうかもしれない。

そして恐ろしいことに、子供本人は「靴が原因だ」とは気づけません。 なぜなら、人間の身体は良くも悪くも「慣れる」からです。 悪い靴でも毎日履いていれば、それが「普通」になります。 「良い靴(自然な靴)」を履いて初めて、今までの靴がいかに違和感だらけだったかに気づくのです。

「最近、別のことをやったから痛いのかな?」 そうやって直近の出来事に原因を求めがちですが、本当の原因は、毎日当たり前のように履いているその足元にあります。

たかが靴ですが、されど靴なのです。

-院長の視点
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