スポーツ現場や救急の常識「RICE処置」。 しかし、教科書通りの「とりあえず安静、とりあえず固定」が、実は治癒を遅らせ、「治ったふりをした再発予備軍」を作っていることをご存知でしょうか。
当院が臨床現場で見てきた真実は異なります。 安静が必要ないケースもあれば、冷やすことで逆に血流が良くなる事実もあります。
今日は、RICEをアップデートした当院独自の概念「RICC(リック)」について解説します。
1. Rest(安静):それは「絶対」ではない
「怪我=安静」と思い込んでいませんか? 安静にするべきか、動かすべきかは、「出血と熱」で見極める必要があります。
「足が攣った」時、安静にしますか?
しませんよね。本能的にストレッチをして、伸ばそうとするはずです。 肉離れや捻挫も同じです。 「少し捻ったが腫れていない」「プチッといったが出血はない(内出血が見られない)」 このレベルであれば、筋肉や腱が少し伸びた程度です。 見た目に変化がない場合、安静にする必要は全くありません。 むしろ、アイシングをしてストレッチで動かすべきです。
安静が必要なのは「本能が止める」時だけ
逆に、内出血でパンパンに腫れ、ズキズキと熱を持っている時。 この時は、身体が「動くな!」と信号を出しています(外傷性浮腫による血液凝固反応)。 この「熱と腫れがある緊急事態」の期間だけ、徹底的な安静と冷却が必要です。
2. Icing(冷却):冷やすと「固まる」は嘘
「冷やすと血行が悪くなって治りが遅くなる」 最近、そんな説を耳にしますが、それは現場を知らない机上の空論です。
冷却後の「赤み」を見よ
正しくアイシングをした後、皮膚を見てください。 程よく赤くなっている(発赤している)はずです。 これは「リバウンド効果(反応性充血)」と言って、冷やされた反動で身体が熱を生み出し、血管を一気に拡張させている証拠です。
冷やした後の皮膚は、血流が良くなり、驚くほど弾力(柔らかさ)を取り戻します。 「冷却=固める」ではありません。 「冷却=循環ポンプを動かし、弾力を生む」のが真実です。
「冷やしっぱなしで動かさない」のが悪
アイシングで治りが悪くなるケースがあるとしたら、それは「冷やして、痛みを消して、そのまま動かさない」からです。 これをすると、組織は癒着し、硬結(しこり)になります。
3. Compression & Elevation(圧迫と挙上):気休めに過ぎない
圧迫は「止血」が必要な時だけ
圧迫は常に必要ではありません。 出血のない捻挫や肉離れで圧迫をすると、逆に循環を止めてしまい、癒着の原因になります。 圧迫が必要なのは、「あきらかな内出血」があり、関節の隙間に血が入り込むのを防ぎたい時だけです。
挙上は不要
「心臓より高く上げる」のも、ズキズキとうずくような痛みがある時以外は、基本的に不要です。 むくみ防止のイメージが先行していますが、そこにこだわるよりも優先すべきことがあります。
4. 新基準「RICC(リック)」:CはCognition(認知)
当院では、E(挙上)の代わりに、最も重要なC(Cognition:認知)を提唱します。
痛みを「隠す」な、「感じる」んだ
冷却して熱感が取れたら、次の段階では「痛みを感じながら動かす(ストレッチ)」ことが絶対条件です。
多くの人が失敗するのがここです。 安静にしすぎて痛みを感じないまま過ごすと、脳は「治った」と誤解します。 しかし、内部では出血した血液が糊のように固まり(癒着)、組織がへばりついています。
その状態でスポーツに復帰するとどうなるか? 動いた瞬間に、癒着した部分が無理やり剥がれ、激痛が走ります。 これを皆さんは「再発した」と言いますが、違います。 「治っていなかった(癒着していただけ)」なのです。
RICC処置の鉄則
- Rest(安静): 腫れと熱がある時だけ。
- Icing(冷却): 必須。循環を作り、弾力を戻す。
- Compression(圧迫): 出血を止めたい時だけ。
- Cognition(認知): 痛みを直視し、ストレッチで癒着を剥がす。
アイシングをしながら、程よい痛みを感じるレベルでストレッチを併用する。 痛みを脳に認知させ、癒着を剥がしながら治していく。 これが、再発しない最強の治癒プロセスです。
