「股関節を柔らかくしたい!」 そう思って、毎日ストレッチを頑張っているのに、一向に効果が出ない…。 それどころか、なんだか腰や膝まで痛い気がする…。
もし、あなたがそんな悩みを抱えているなら、そのセルフケアは根本的に間違っているかもしれません。
この記事では、15年間の臨床経験を持つ施術のプロが、股関節の柔軟性に関するよくある疑問にQ&A形式で徹底的にお答えします。
世の中の「常識」とは少し違うかもしれませんが、あなたの身体を本質から変えるための「真実」がここにあります。
股関節の柔軟性に関するQ&A
1. 毎日ストレッチを頑張っても、なぜ柔らかくならないの?
A1. アプローチの“順番”が間違っているからです。
硬くなった股関節は「ロックがかかった扉」のようなものです。多くの人は、この扉を力ずくでこじ開けようとしていますが、それでは扉が壊れてしまう(=怪我をする)だけです。
本当にすべきことは、まず**「扉のロックを解除する鍵」**を探すこと。
実は、股関節が硬くなる本当の原因は、股関節そのものにはありません。原因を無視して股関節だけを伸ばそうとしても、身体が抵抗して、決して柔らかくはならないのです。
2. 「開脚180度」が目標です。目指してはダメ?
A2. 「健康のため」であれば、目指すべきではありません。
多くの人が「股関節が柔らかい=開脚ができる」と信じていますが、これは危険な幻想です。
施術家としてバレリーナなど身体の柔らかい方の身体をみると、確かに開脚はできても、股関節本来の最も重要な動きである**「曲げて、内に捻る(屈曲・内旋)」**という動きが非常に硬いケースが後を絶ちません。
見た目の派手さ(開脚)と、身体の機能性(健康)は全くの別物です。不必要な開脚の追求は、腰の反りを強くするなど、将来的な不調のリスクを高める可能性があることを知っておいてください。
3. 股関節が硬くなる“本当の原因”はどこにあるの?
A3. 驚かれるかもしれませんが、多くは「上半身」にあります。
猫背や巻き肩といった日常の姿勢の崩れは、胸や背中の筋肉をガチガチに固めてしまいます。
この上半身の緊張が、血管、神経、呼吸、消化器系など、様々なルートを介して骨盤の動きを制限し、最終的に股関節に強力なロックをかけてしまうのです。
股関節は、上半身の崩れの「結果」として硬くなっているにすぎません。大元である上半身の問題を解決しない限り、股関節が真に解放されることはないのです。
4. 絶対にやってはいけないストレッチってある?
A4. はい、あります。それは「内もも」のストレッチです。
もしあなたが内ももに「張り」や「凝り」を感じていたとしても、絶対にそこを直接伸ばそうとしないでください。
内ももの筋肉(内転筋)は、股関節を「安定」させるための重要な支えです。ここに張りが出ている時点で、それは「身体の使い方を間違えている」というSOSサインに他なりません。
原因は他にあるのに、結果である内ももを無理に伸ばせば、股関節の安定性が失われ、さらなる不安定と痛みを招くだけです。内ももは**「伸ばす」のではなく、正しく「使って」あげるべき筋肉**なのです。
5. では、結局どうすれば股関節は柔らかくなるの?
A5. 以下の「正しい順番」でアプローチすることが全てです。
股関節が硬いあなたが最初に取り組むべきは、股関節のストレッチではありません。以下の「準備運動」です。
【ステップ1:上半身のロックを解除する】
まずは大元である上半身の緊張を解き放ちます。
- 胸のストレッチ
- 背中の運動
- 体幹を捻る・横に倒す運動
【ステップ2:股関節の“関連筋”を整える】
次に、股関節の動きを直接的に邪魔している筋肉にアプローチします。
- 前もも
- もも裏
- お尻
これらの「準備」を丁寧に行うだけで、多くの方は股関節のロックが外れ、驚くほどスムーズに動くようになるはずです。
この**「自然に柔らかくなった状態」**を作って初めて、あなたは股関節のストレッチを行うスタートラインに立ったと言えるのです。
まとめ:魔法のストレッチより、「自分を知る」こと
あなたの股関節を本当に柔らかくするのは、どこかの誰かが紹介する魔法のストレッチではありません。
「なぜ、自分の股関節は硬くなっているのか?」
その原因を、あなた自身の「姿勢」や「身体の使い方」の中から正しく知ることです。
この記事が、あなたが情報に惑わされず、自分自身の身体と向き合うための第一歩となれば幸いです。