スポーツにおける怪我は多くの場合、「捻挫」と診断されますが、その中には腓骨筋腱の損傷など、より深刻な軟部組織の損傷が隠れていることがあります。私も好きなNBAのステフィン・カリー選手が腓骨筋腱の損傷を負ったケースは、的確な診断が重要な教訓を提供します。本記事では、腓骨筋腱の損傷がどのようにして捻挫と誤診されるのか、そしてその重要性について考察します。
捻挫の痛みは靭帯が原因ではない
捻挫の痛みの原因は何でしょうか。
足首を捻る動作を捻挫とされていますが、その損傷される組織は靭帯ばかりではありません。逆に靭帯だけを損傷するケースは稀であり、ほとんどの場合に複合損傷を併発します。
複合損傷とは、靭帯や腱や骨や骨膜や滑液包などを同時に痛めるような疾患です。
足首のケガの場合には特に複合損傷が多く、大抵靭帯損傷による腫れや炎症ではなく、筋腱や骨骨膜の炎症がみられます。その痛みの原因を明確にせずに施術を行うと、思うような経過に至らず治癒が長引くことがあります。
腓骨筋腱の損傷
足首の捻挫の場合には、腓骨筋腱や前脛骨筋腱といった腱を痛めることが多いです。
一回でも捻挫により足首を痛めた場合には、意外とその損傷組織は完全に回復することは出来ずに、機能低下を起こしていることが多いです。基本的に痛めた組織は元には戻りにくく、腱の場合には肥厚したり、足首の可動域を低下させたりといった問題を残し続けることがあります。
その足首の問題が今度は膝や股関節の痛みに繋がり、小さな原因が大きなケガへと繋がることになります。
そうならない為にも、捻挫をした場合にはしっかりと損傷組織を触診によりチェックし、可動域の低下や腱の肥厚を残さないように治療を継続的に行うことが求められます。
カリー選手のケガの状態
カリー選手が受けた腓骨筋腱の損傷は、単なる捻挫とは異なります。MRIでは構造的な損傷は見つからなかったものの、腱の損傷は医師によって明確にされました【引用元ステフィン・カリーの負傷に専門家が見解 離脱期間やウォリアーズの対応はどうなる?】。日本では、多くの患者が「捻挫」と診断され、しっかりとした診断が行われていないのが現状です。例えば、足関節捻挫全治6週間のように。
重要な診断と再発予防
腓骨筋腱の損傷は、正確に評価されないと、再発のリスクが高まります。捻挫と誤診されることで、治療が不十分となり、症状が慢性化する可能性があります。当院では、捻挫と診断された患者に対し、腓骨筋腱や前脛骨筋腱の損傷を指摘し、適切な対応を行っています。これにより、痛みの軽減とともに、捻挫癖を防ぐことができます。
医療の進化と患者の意識
医療の現場では、単なる対症療法ではなく、原因を突き詰める姿勢が求められています。現在の医療システムでは、十分に原因を特定することが難しい場合がありますが、それは患者の健康を損なう可能性があります。特にスポーツ選手にとって、正確な診断と適切な治療はパフォーマンスの維持に不可欠です。
まとめ
腓骨筋腱の損傷は単なる捻挫ではありません。正しい診断と治療が、再発を防ぎ、医療費の抑制にもつながります。「捻挫」という言葉に対する理解を深め、正確な情報を発信することで、日本のスポーツ医療のレベルを底上げできると信じています