広告 施術の考え方と哲学 脊髄・末梢神経の働き 足首・ふくらはぎの痛み(捻挫、アキレス腱)

足のしびれ、原因は腰にあり。レントゲンに映らない痛みの正体、デルマトームで解き明かす。

2025年7月18日

はじめに:「デルマトーム」の臨床的意義

「デルマトーム」という言葉をご存知でしょうか。 施術家や医療系学生の方であれば、解剖学の教科書で必ず目にする言葉ですが、施術者であっても、その臨床的な重要性まで深く理解している方は少ないかもしれません。

  • 「足のしびれの原因が、検査をしてもよくわからない…」
  • 「腰を治療したら、関係ないはずの足の痛みが楽になった。なぜ?」

この記事は、そんな疑問を持つ患者さん、そして「デルマトームの知識をどう臨床に活かせばいいかわからない」と感じている同業の施術家や学生の方のために執筆しました。もちろん、痛みでお悩みの方にも参考になるかもしれません。

その痛み、しびれの原因は?本当の問い

「その痛みは、血行不良が原因ですね」 そう言われても、いまいち納得できない原因不明の痛みやしびれはありませんか?

『局所に明らかな所見がないにも関わらず、なぜ疼痛が発生しているのか?その求心性の信号は、一体どこから発信されているのか?』

この問いに対する答えの鍵を握るのが「デルマトーム」です。 結論から言えば、デルマトームとは、身体が作られる発生段階で、一本一本の脊髄神経とセットで伸びてきた皮膚領域(皮膚分節)のことです。だからこそ、皮膚に現れる症状の根本原因は、その領域を支配する「脊髄」にあると強く推測できます。臨床においてこの知識は、痛みの発生源と責任神経レベルを特定するための、極めて重要な指標となります。

デルマトームの解剖学:発生学からの視点

では、デルマトームとは具体的に何を指すのでしょうか。 それは、身体の「成り立ち」から考えると非常に分かりやすいです。

私たちの身体が作られる初期段階(発生期)において、脊髄の各分節から伸びる神経は、それぞれが担当する皮膚エリアを持っていました。身体が成長し、手足が伸びていく過程で、その皮膚エリアも一緒に引き伸ばされていきます。この、もともとの脊髄神経との繋がりを保ったままの皮膚領域が「デルマトーム」なのです。

デルマトーム
横の関連する内臓などは参考までにあくまでも指標レベルのものです。

例えば、下肢における代表的なデルマトーム領域は以下の通りです。

  • L4神経根: 膝蓋骨(膝のお皿)周辺から下腿内側
  • L5神経根: 下腿前面から足背、足の親指
  • S1神経根: 下腿後面から足裏、足の小指側
  • S2神経根: ふくらはぎの内側後面

つまり、足の親指にしびれ(知覚異常)がある場合、局所の問題だけでなく、その領域を支配する中枢側、すなわち「腰椎5番(L5)の脊髄神経」に何らかの機能障害が起きている可能性を高く疑うことができるのです。

更に詳細に知りたい方は新デルマトームでご確認ください。とても参考になる一冊です。

なぜ?デルマトームが臨床で重要となる理由

デルマトームの知識が、なぜ臨床でこれほど重要なのでしょうか。 それは、症状が出現している部位(愁訴部位)と、その根本原因が存在する「脊髄神経」のレベルとが、解剖学的に離れているケースが非常に多いからです。

当院であった臨床例をご紹介します。 ある患者さんが、手首の内側に原因不明の痛みを訴えて来院されました。手首を動かしても特定の動作での痛みはなく、腫れや炎症も見当たらない。まさに「原因不明」の状態です。

しかし、デルマトームの視点で見ると、手首の内側はC5およびT1神経根の支配領域です。そこで、この患者さんの頸椎を詳しく調べると、C5が大きく前に変位し、C6が後方に凸となるような、不自然な段差(アライメント異常)が見られました。この段差によって神経の通り道が狭くなり、神経にストレスがかかっていたのです。

そこで、当院では手首には一切触れず、この根本原因であるC6周囲の構造を整え、C5とC6が安定するように支えを作る施術を行いました。その結果、悩んでいた手首の痛みは劇的に軽快したのです。

このように、デルマトームは私たち施術家にとって、痛みの根本原因を探るための評価指標であり、的確で再現性の高いアプローチを可能にする羅針盤なのです。

セルフケアのヒント:あなたの症状を理解する視点

もし、あなたが原因不明の痛みやしびれに悩んでいるなら、一度デルマトームという視点からご自身の症状を捉え直してみてください。

  • その痛みは、いつ、どのようなきっかけで生じましたか?
  • 動かした時だけ痛みますか?それとも、じっとしていてもジンジン、ピリピリしますか?
  • 病院でレントゲンやMRIを撮っても「特に異常なし」と言われたことはありませんか?

もし、「特定の動作で痛みがない」「明らかな原因がない」または「首張りやコリを感じる」「姿勢が悪い」という場合、あなたのその症状はデルマトームが関係しているかもしれません。それは、画像検査には決して映らない、神経からのSOSサインなのです。

【知識を深める】合わせて読みたい関連記事

この記事で解説したデルマトームの知識は、他の症状を理解する上でも非常に役立ちます。

例えば、ふくらはぎの肉離れを繰り返す方は、その好発部位がS2神経のデルマトーム領域と重なることが多く、腰椎や仙骨の問題が根本原因として隠れているケースが少なくありません。

【専門家が解説】ふくらはぎ肉離れの正しい予防法 はこちら

このように、身体の痛みや不調は、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。

まとめ:痛みの本当の原因を知る、はじめの一歩

今回は、専門的な内容である「デルマトーム」について解説しました。 すべてを詳細に記憶する必要はありません。ただ、この記事を通して「原因不明の痛みやしびれには、神経を介して離れた場所に根本原因が隠れている可能性がある」ということを知っていただけたなら、それこそが症状改善への大きな一歩です。

あなたの長年の悩みの原因も、このデルマトームという視点で身体を評価することで、見つけ出すことができるかもしれません。

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